研究最前線 Vol.05:早川信介

研究最前線 Vol.05:早川信介

地元京築の「安心」のためにスタートした橋梁点検とその研究

我が国の道路橋は約723,000橋を数え、その内の91%を地方自治体が管理しています。この橋梁構造物においては1960年代に米国で部材腐食と過加重によって落橋事故が発生し、日本でも橋の老朽化における研究が始まっていたところ、平成24年12月に笹子トンネルの天井板落下事故が発生しました。橋梁の老朽化対策が緊急課題となった我が国において、京築地区1町の114橋から始め、その後1市2町728橋のうち架設年度の古い336橋を対象とした調査を行うこととなり、コンクリート橋の劣化進行とその推定に関する研究が始まりました。

慎重且つ迅速な調査研究が課題

海に面した京築エリアの橋梁を調査していくと、アルカリ骨材反応(ASR)によるコンクリート構造物の損傷事例が多く、山間部の凍結による凍結防止剤や海からの飛沫塩害等の物理的要因を考慮しつつ調査研究を進めています。ASRは、コンクリートの強度および弾性係数の低下やかぶりコンクリートの剥落等により、構造性能の低下が懸念されるだけでなく、コンクリート表面に発生したひび割れから塩化物イオン、水、酸素がコンクリート内部に浸入できるようになると、内部鉄筋の腐食も危惧されるため、慎重且つ迅速な調査が必要です。

日本ならではの安心の構築こそがテーマです

橋梁の長命化には2種類が考えられます。一つは橋そのものを架け替えるというもの。しかし現代においては予算的な問題から現実的ではありません。そうなると劣化したコンクリートの「ひび」に樹脂を埋め込み補修し、表面をはつって塗り替えていくという手法しかありません。日本人ならではの「永く大切に」という心に沿ったやり方ですし、米国では重要部材外での「遠望目視」中心の点検を行っているが日本では打音を含む「近接目視」を活用した詳細点検を実施しており、それこそが私たちの暮らしにおける安心感へとつながると、日々研究を重ねています。


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