「デザイン女子No.1決定戦」の都市・建築部門賞で、No.1&特別賞を受賞

平成28年3月22日(火)23日(水)に行われた「デザイン女子No.1決定戦 2016 NAGOYA」で、平成27年度に本学建築学科を卒業した、有馬 万結さん(八幡中央高等学校出身)の卒業設計制作が、都市・建築部門賞で全国No.1に輝きました。また、高瀬 舞さん(田川高等学校出身)の作品は、同部門で特別賞を受賞しました。

女子No.1

「デザイン女子No.1決定戦」は、今年度第5回目の開催で、全国の大学・短大・高専・専門学校に在籍する女子学生による都市・建築・インテリア・プロダクトなどの空間に関係するデザインの卒業設計・制作を、地理的に日本の中心となるNAGOYAに集め、その年に卒業するデザイン女子No.1を決定する公開審査会です。「女子」という視点とキーワードを介して、都市・建築・インテリア・プロダクトといったデザイン分野について議論することにより、デザイン業界、さらには、社会全体に向けて、新たな視座でのデザインムーブメントを発信することを目指して開催されています。

 


 

[有馬さんの作品]

うつわのあと-雨水宿りて泉の如し-

女子No.1

大きな大きなインフラの転換に交わる水の循環の中で生きる小さな小さな暮らしの提案である。
多くのインフラは、私たちの生活の基盤であるにも関わらず、巨大な土木の領域として、生活空間とは、切り離されてきた。それは、乖離していく水のインフラスケールでなく土木インフラが建築空間と共生し、ヒューマンスケールの寸法を持ち、生活の空間を模り、地域の水循環を再考する必要性を秘めているのではないだろうか。
福岡県北九州市若松区本町には、地下水を伝い現役で水を汲み出す、水インフラの最小形態、6基の手押しポンプがついている通りが存在する。B-29からの焼夷弾が落とされる際の消火や防火への使用目的で設置されてからはや74年が経過した。皿洗いや花の水やりなどの生活用水として町の人々に広く利用され守られてきた軍事遺産の姿である。この地だけのミニマムインフラとの共存文化を残し、天の水を受け止め、地の水が浮遊したかの如く現れ、それらの境界となる空間、都市ダムの誕生である。

女子No.1

 

[有馬さんのコメント]

私たちの生活において水の循環は、目に見えず、同様に、置き去りとなっていく水の町のアイデンティティー。私は、それらの現状にどこか寂しさを感じました。だからこそ、建築の役目は、見えていなかったことを可視化し、それらの空間に最適な寸法を与え、手を差し伸べていくことだと考えました。そして、地域の水循環を再考し、雨・水・手押しポンプとともに生きる町をヒューマンスケールの寸法を持ったインフラとして形成される未来を描き、この作品と向き合いました。
4年間、西日本工業大学で学び、集大成として出展した今回の作品展においてとても光栄な賞をいただき、結果という形で、私を指導してくださり、支えてくださった方々に恩返しすることができたことを嬉しく思っています。そして、私が卒業設計を通して問いかけていきたい思いを建築家の方々と真剣にぶつけ合うことができた最高の集大成だったと感じています。
卒業設計は、意思の表れです。だからこそ、私は、終わらせない卒業設計のその後を追い求めるため、これからの活動に取り組んでいきたいと考えています。

 


 

[高瀬さんの作品]

「廃墟守」-建築の精神的継承方法、崩壊の肯定-

女子No.1

1、廃墟の本質はその崩壊の姿
廃墟、それは、その主も役目も失い、そのまま忘れ去られ、朽ちてゆく建築。自然に任せ、少しずつ朽ちてゆく様、この過程こそが廃墟という存在の本質であり、人の手から離れた建築の最期の姿である。そんな廃墟は、どうあるべきか。そしてそれを、どう守るか。それが、私の提案の主題である。また、廃墟を通して、建築の本当の価値とは、本質とは何か、問いたい。見誤った、建築の評価基準によって生じる、はく製化した不幸な建築。そんな建築への追悼と、アンチテーゼを立体化する。

2、対象廃墟 端島炭鉱、通称「軍艦島」

3、問題提議 廃墟保存に対する矛盾
長い風化を経てきたものに、保存の手が加えられ、それは不自然な廃墟として冷凍保存されようとしている。物理的な形として残すことが、はたしてこの島の正しい継承方法なのだろうか。修復して崩壊を食い止めるといった手法は、軍艦島の廃墟としての存在意義すらも否定しているように思える。

4、サンクチュアリを設計する

■提案:朽ちてゆく姿こそが本質だ。崩壊を肯定するという、精神的継承方法でこの島を守る。

■手法:自然の侵食は受け入れるが人間の立ち入りを拒む、サンクチュアリを設計する。一定の距離感を保ったその周囲で、ゆっくり朽ちてゆく姿を見届ける。

5、空間 土木→ヒューマンスケールへ

鋼管杭は、建築の基礎などに使われる土木的建築部材であるが、ここに、内部空間があることに着目した。土木的スケールのものが、ひとたび内に入るとヒューマンスケールの建築空間へと展開。この鋼管杭に各機能を与え、4種類の内部空間をデザインする。

女子No.1

密度の高い杭一本一本で一つの廃墟を守り、崩壊を全うさせる。
いずれこの廃墟は自然に飲み込まれるだろう。
そしてそこにはその廃墟の記憶を収め、その存在の証となる杭が残る。
崩壊を肯定する継承方法、これが私の提案する「廃墟守」。